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鹿児島地方裁判所 昭和52年(ワ)304号 判決 1979年2月06日

主文

鹿児島家庭裁判所が同庁昭和四九年(家)第四七五号遺言書検認事件につき昭和四九年六月三日検認した遺言者原田實の自筆証書による遺言は、無効であることを確認する。

訴訟費用は、被告の負担とする。

事実

第一  申立

(請求の趣旨)

主文第一項、第二項同旨の裁判を求める。

(請求の趣旨に対する答弁)

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

との裁判を求める。

第二  主張

(請求原因)

一  訴外原田實は、昭和四九年四月二二日死亡し、原告両名および被告は右原田實の共同相続人である。

二  原告原田和は、鹿児島家庭裁判所に原田實の遺言書として別紙のような遺言書の検認を申立て、同裁判所は、同庁昭和四九年(家)第四七五号遺言書検認事件として同年六月三日これを検認した。

三  右遺言書は、自筆証書による遺言書の形式を有し、検認当時開封されたままであつたものであるが、遺言者原田實名下には勿論その他の箇所にも遺言者の捺印がなく、また、二葉にわたる遺言書の間に契印もなかつたものであつて、形式的要件を欠くもので、無効である。

ちなみに、検認に際しては、原告原田和において、原田實の印鑑を使用して同人名下に捺印し、契印を押したうえ検認を申立てたものである。

四  また、川内市所在の農地につき、市外居住者で農業に従事していない被告に対し、小作地を小作人以外の者に対し、それぞれ特定遺贈されており、これは農地法に抵触し、実現不可能な遺言であつて、実質的にも無効というべきである。

五  しかるに、被告は、前記遺言書の有効を主張してこれが執行を求めているので、右遺言書の無効であることの確認を請求する。

(請求原因に対する答弁)

一  請求原因第一項、第二項の事実は認める。

二  同第三項の事実中、本件遺言書が自筆証書遺言であり、検認当時開封されていたこと、右遺言書一葉目裏と二葉目表間の契印および一葉目一行目の訂正印の押印がなく、これを原告原田和が押印したことは認める。しかし、該遺言書の遺言者氏名下の押印、一葉目五行目の訂正印および一葉目表と二葉目裏間の契印は遺言者において遺言書作成時押印してあつた。前記原告原田和の押印した二印は、法律上氏名印程の重要性は無く、これを欠いたとしても、右遺言書の効力に影響はなく、右遺言書は有効であり、原告らの請求は棄却さるべきである。

三  同第四項の事実および主張は争う。

四  同第五項中被告が右遺言書の有効を主張していることは認める。

第三  証拠(省略)

(別紙)

昭和四八年五月作成の遺言の公正証書を左記の通り訂正す。

一 原田實の遺産相続者を下木場敦子とす。

二 鹿児島市中央町六番地一六の宅地<省略>は下木場敦子と、後の<省略>を原田和に、残<省略>をとし子、貞子、下木場まゆみ、有村まなみに遺贈す。

三 鹿児島市南新町一八―二八の宅地は、實及びとし子名義なるもとし子分は、中央町の遺贈分を当て、家及び土地を有村いつよに遺贈す。

四 川内市中村町二七二〇の家屋は下木場敦子に

五 川内市中村町宅地、前後の畑は下木場敦子に

六 中村町墓下の畑は原田和に

七 川内市中村町前迫の田二反一畝二六歩は下木場敦子に

八 右同所大島の田九畝二五歩は原田和に

九 中村町玉田の田原田孝蔵小作の部は原田末次に

一〇 山林の中岳の檜の木の内<省略>は、とし子、貞子、いつよ、

前迫池え脇の杉、檜の木山もとし子、貞子、いつよ

北ケ迫の杉の大三本の内一本はいつよ

一一 昭和四九年田島との裁判は、隈元弁護士一人にし、

原田方は妻和、敦子、和輝の三者協議で原田の面目の立つ決定に持ち込むこと

一二 遺言執行者を内藤朗玄氏に

昭和四九年四月六日

遺言者 原田實

一三 遺産の内より小山田和夫、内藤朗玄に各五〇万

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